震憾しんかん)” の例文
ここに、グリゴリイが以前からいだいていたある不愉快なけがらわしい疑惑を、徹底的に裏書きして、彼の心を震憾しんかんさせた特別の事情があったのである。
ときいた忠相のあたまに、電光のようにひらめいたのは、当時府内を震憾しんかんさせている逆けさがけの辻斬り、その下手人げしゅにんも左剣でなければならない一事だった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いくら武術を好み乗馬に巧みだからと云つて、国全体を震憾しんかんさせるやうな荒競技に……それにまた達するやうな猛練習など第一生理的耐持力もありやうはずは無い。
秋の夜がたり (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
だが結局サガレンに、彼は震憾しんかんもされず圧倒もされなかった。何か良心の重荷をおろしたとでもいった気分も手伝ったのだろうか、かえって元気が出て陽気にすらなった。
去年の下半期の思想界を震憾しんかんしたようなこの書物と続編とは倉地の貧しい書架の中にもあったのだ。そして葉子はおもしろく思いながらその中を時々拾い読みしていたのだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)