電球たま)” の例文
遙か眼の下、谷底のような舞台には、黄色ッぽい五燭の電球たまが、タッタ一つ微かな輪を描いているきりであった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
少年は、高いところにいている電灯の電球たまを、ねじって消すために、長い竿竹さおだけ尖端せんたんを、五つほどに割って、繃帯ほうたいで止めてある長道具ながどうぐを担ぐと、急いで駈け出していった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おくみは二階の十六燭の電球たまをはづして来て、座敷の暗い十燭と取りかえてお上げした。洗吉さんはこの頃はこゝのテイブルが好きだと仰つて、こちらへ来て椅子におかけになる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
深閑とした部屋の中に、天井から蜘蛛くものようにぶら下った電球たまの下で、この哀れな二人の男は、不自然に向き合ったまま黙々として畳の目をにらみ、タバコをふかしていた。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)