電車会社の慰謝金はなぜか百円そこそこの零砕な金一封で、その大半は暇をとることになった見習弟子にくれてやる肚だった。
昔から今日に至るまで、あらゆる本は、何んな零砕な本でも、小冊子でも、すべて人間生活の状態の『あらはれ』である。従つて、そこからも多くの知識が得られる。
零砕なものすらも捨てるに忍びなかった。他にはほとんど誰も購う者がないので、いつもわずかばかりの金子を払ったに過ぎない。幾十年かの後、このことは興深き昔語りとなるであろう。
零砕体を為さず。慚愧々々。猶余は、この遠足中、特に日本女子服装の不完全なるを切に感じた。常服を改良するか、然らざれば少くも旅行服について、特別の意匠を用いねばならぬ事と思った。