雪山せつざん)” の例文
さて、私は一人の倭人こびとが、雪山せつざんのように高い、白い白い破損紙の層を背に負って、この大伽藍の中をうように動き出したのにも驚いた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
その川はそこからずっと西北の方をながめますと二十余里も向うの方にどっかりとすわって居る大きな雪山せつざんの間から流れて来て居るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
牧牛の女難陀婆羅、世尊に乳糜を献じ奉る、——世尊が無上の道へ入られるには、雪山せつざん六年の苦行よりも、これが遥かに大事だったのじゃ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
尾花たか生茂おいしげれる中に、斜めにたてる石仏いしぼとけは、雪山せつざんに悩む釈迦仏しゃかぶつかと忍ばる。——見ればこけ蒸したる石畳の上に。一羽の雉子きぎす身体みうち弾丸たまを受けしと覚しく、飛ぶこともならでくるしみをるに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
またネパール人及び雪山せつざん地方のチベット土人は布類、砂糖、羅紗らしゃ類をインド地方より仕入れて、バタ、羊毛、ヤクの尾の類と交易し、それをまたインド地方へ売るんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
まず麦を取ってそれから蕎麦そばを取るのです。その畑の四、五丁向うにカリガンガーがあってその向うに低い松がえて居ります。その松山の上には例のごとく雪山せつざんそびえて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)