くるし)” の例文
しかし肉漿にくしょうや膿血は拭ひ得てもその欲情のくるしみのしんは残つてゐる。この老いにしてなほ触るれば物をむさぼり恋ふるこころのたちまち鎌首かまくびをもたげて来るのに驚かれた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
わしはそれを楽しみに苦界へ戻ろう。勇んでまた責苦のくるしみに遇いに行こう。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そうなると維摩以上に人間が出来ている人物でなくてはなりません。それはそうでしょう。家庭の苦労にくるしんでいる人に独身者の慰めはあまり力になりません。好意を感ずるだけであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)