雌蕊めしべ)” の例文
ふと眼をとめた一ばん見事な花の心から、雌蕊めしべをつたはつて、彼女には蜘蛛ほどの大きさにも感じられた醜い一匹の黒蟻が這ひ出して来た。
水と砂 (新字旧仮名) / 神西清(著)
その百合の花非常に白きを嫉んでヴェヌス女神海波の白沫より出現し極浄無垢の花の真中にうさぎうま陽根いちもつそのままな雌蕊めしべ一本真木柱太しくはやした
あわててさき後れたきりしまの赤い雌蕊めしべにその身を置いてやるのも、この頃の私の心のさせることで有る。
この頃 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それよりも著しいのは雌蕊めしべの抜け落ちたあと、つぶのまん中に穴があいていて、自然に糸を通すことができた点、それからまた一つは色なりつやなりまるみまでが
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いちいち彼女の琴線きんせんには、こころよい語感になって、雌蕊めしべの命をふるわすのだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)