隻脚かたあし)” の例文
既に隻脚かたあしを墓に入れしひとりの者程なくかの僧院のために歎き、權をその上にふるひしことを悲しまむ 一二一—一二三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そこでみずから怖るることは、かく隻脚かたあしの不具となっても、年月てば、いつか往年の苦しみも恩も忘れ、横着なわがままごころが、とかく不足を思い出すもの。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
に近きところには、盜人の屍の切り碎きて棄てたるなり。隻腕かたうで隻脚かたあしは猶その形を存じたり。それさへ心を寒からしむるに、我すみかはこゝより遠からずとぞいふなる。
(僕は突然K君の夫人に「先達せんだってはつい御挨拶もしませんで」と言われ、当惑したことを覚えている)それからもう故人になった或隻脚かたあしの飜訳家もやはり銀座の或煙草屋に第二の僕を見かけていた。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すでにゆかんとしてその隻脚かたあしをあげし後、マオメットかく我に曰ひ、さて去らんとてこれを地に伸ぶ 六一—六三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)