険難けんのん)” の例文
掌のうえにせてやると、険難けんのんがって鼻をくんくんいわせる。その様子はまるで人間の子供が、「もういい。もういい。」と云っているように見える。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
だが、その吠える声になんらの険難けんのんはありませんでした。それは自他の警戒のために吠ゆるのではなく、むしろ驚異のために吠えたようなものです——
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
本人に暗記さしておけばいいようなもんだが、日本人と違って外国人は買収が利くんだから、つまるところ、密書を持たせるよりも険難けんのんな事になるんだ。
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「床屋にも何にも、下町じゃ何てますか、山手やまのてじゃ、みんなが火の玉の愛吉ッていいましてね、険難けんのんな野郎でさ。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一体ならば迎いなど受けずともこの天変を知らず顔では済まぬおまえが出ても来ぬとはあんまりな大勇、汝のお蔭で険難けんのんな使いをいいつかり、忌々いまいましいこのこぶを見てくれ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「並んで歩いては険難けんのんだ。なんでもよい、先に立て」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あんなを傍におくと、険難けんのんだよ。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一体ならば迎ひなど受けずとも此天変を知らず顔では済まぬ汝が出ても来ぬとはあんまりな大勇、汝の御蔭で険難けんのんな使を吩咐かり、忌〻しい此瘤を見て呉れ、笠は吹き攫はれる全濡ずぶぬれにはなる
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)