陥込おちこ)” の例文
旧字:陷込
そこまで、聴いたとき、美奈子は自分の立っている廊下の床が、ズーッと陥込おちこむような感じがしたかと思うと、支配人がおどろいて彼女の右の肩口を捕えていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なまじ足手まといがなくて反ってよかったとしても、相手の警備の行届いきとどいているのに驚いている頃は、巧妙に作られた罠に陥込おちこんで、免れようもなく羽搏はばたいていたのでした。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「これはとてもいかん。むしろ廃殿の中で眠った方が得策だ」と早速天幕を疊み、一同はまたもやゾロゾロと、のきは傾き、壁板は倒れ、床は朽ちて陥込おちこんでいる廃殿にのぼ
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
まだ三十そこそこでしょうが、青髯あおひげのある、凄いほどの男前。これが身を持崩さして、腕も家柄も申分のないのが、両刀を捨てて、遊び人の仲間に陥込おちこませた原因でしょう。
悪魔の手に引込まれて無限の奈落に陥込おちこむべしと、今はそのような事を信ずる者はあらざれども、地球の果の断崖なるといなとを問わず、余の船は今一刻々々余を死の場所へ導きつつあるなり
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
先代徳五郎の身代を継いだ上、その美しい後家と一年後には一緒になった由兵衛は、わなの中に陥込おちこんだ獣のように、あがきようのない、恐ろしい境遇に置かれたことを自覚しないわけには行きません。