閨房ねや)” の例文
翌日になって豊雄は閨房ねやから逃げ出して庄司に話した。庄司は熊野詣くまのもうでに年々来る鞍馬寺くらまじの法師に頼んで怪しい物をとらえてもらうことにした。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
豊雄をひそかに招きて、此の事よくしてよとて袈裟をあたふ。豊雄これをふところに隠して閨房ねやにいき、庄司今はいとま三八一たびぬ、三八二いざたまへ、出で立ちなんといふ。
彼が好んで、大名の屋敷にはいるのは土蔵の現金と、閨房ねやの上淫がのぞかれるからであった。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外へ出ようと思って豊雄の閨房ねやの前を通りながら見ると、豊雄の枕頭まくらもとに置いた太刀が消えのこりともしびにきらきらと光っていた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
太郎は一二九網子あごととのふるとて、一三〇つとめて起き出でて、豊雄が閨房ねやの戸のひまをふと見入れたるに、え残りたる灯火ともしびの影に、輝々きらきらしき太刀たちを枕に置きて臥したり。あやし。
かくて閨房ねやのがれ出でて、庄司にむかひ、かうかうの恐ろしき事あなり。これいかにしてけなん。よくはかり給へと三二七いふも、うしろにや聞くらんと、声をささやかにしてかたる。