門端かどばた)” の例文
素直に手をさげて詫びて帰ればよし、さもなくば、おのれの襟髪を引っつかんで、いぬころのように門端かどばたへ投げ出すぞ
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは大方門違い、わしの代になってから福の神は這入はいっても狂人きちがいなどいう者は、門端かどばたへも寄り附きません。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ともう門端かどばたも踏まなくなる。この故にお師匠さんはそんな危険は冒さない。声が好ければ尚お更のこと
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
町人でも筋目正しい家では、吉原の女子などは門端かどばたも踏ませませぬ。まして天下の御旗本が、くらべにもならぬ御身分違ひ、とても、とても。(かしらをふる。)
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
門端かどばたの芒の葉が友摺れしてざわざわと鳴るのは、風の音ばかりでもないように思われたが、彼は別に見返ろうともしないで、余念もなしに鍋の粟を洗っていると
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女は、去年の暮ごろに江戸へ帰って、十余年ぶりで高源寺をたずねて来たが、物堅い定吉は寄せ付けないで、すぐに門端かどばたから逐い出そうとすると、お歌は門前の地蔵を指さした。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今夜も暑い晩で、近所の家では表へ縁台を出して涼んでいるらしく、方々で賑やかな笑い声もきこえますが、わたくしは泣き出したいくらいに気が沈んで、門端かどばたへ出ようともしませんでした。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)