びやう)” の例文
千万の誓ひの言葉や、びやうのやうにしつかりとめた筈の純粋さなぞは、泥土にまみれて平気なのであらう……。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
新しくらされた土の上には、亜鉛屋根だの、軒燈だの、白木の門などが出来て、今まで真鍮しんちゆうびやうを打つたやうな星の光もどうやら鈍くなり、電気燈が晃々くわう/\とつくやうになつた。
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
ハイネは静夜の星を仰いで蒼空に於ける金のびやうと言つたが、天文学者はこれを詩人の囈言うはごととして一笑に付するであらうが、星の真相はかへつてこの一句の中に現はれてゐるかも知れない。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
二年前まではこの中学の校舎は兵営だつたため、控所の煉瓦敷れんぐわじきは兵士の靴のびやうや銃の床尾鈑しやうびばんやでさん/″\破壊されてゐた。汗くさい軍服のにほひ、油ツこい長靴の臭ひなどを私は壁からぎ出した。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
日が暮れると東南風シロッコが吹いて、天幕が重い音を立ててゐました。そこへ、不意に白人の紳士がとばりを挙げて私たちをのぞきました。紳士はびやうをつけた旅行靴を鳴らして、天井とすれ/\に入つて来ました。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)