鈍痛どんつう)” の例文
さてどこが不安だろうと、局所を押えにかかると、どこも応じない。ただ曇った空のように、鈍痛どんつうが薄く一面に広がっている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
慢性まんせい胃潰瘍のために、見るかげもなくせおとろえてしまっているし、それがために一日の大半は胃の幽門部に鈍痛どんつうをおぼえ、それが、しばらくつづいたと思うと
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
肩やもものへんに二三ヵ所鈍痛どんつうが感じられ出したが、次郎はほとんどそれを気にしなかった。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
範宴はんえんはありありとそれを感じる。この二、三日の頭の鈍痛どんつうなどがその一例である。夜の熟睡を久しく知らないのもその現象である。ひとみの裏がいつも熱い、思索力はすっかり乱れてしまった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしこの私は学校を出て三十以上まで通り越せなかったのです。その苦痛は無論鈍痛どんつうではありましたが、年々歳々さいさい感ずるいたみには相違なかったのであります。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)