釣狐つりぎつね)” の例文
世が余りに狐を大したものに思うところから、釣狐つりぎつねのような面白い狂言が出るに至った、とこういうように観察すると、釣狐も甚だ面白い。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
老人、あの当時、……されば後月あとつき、九月の上旬。上野辺のある舞台において、初番に間狂言あいきょうげん那須なすかたり。本役には釣狐つりぎつねのシテ、白蔵主はくぞうすを致しまするはず
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
単に迷子と名づけた場合でも、やはりかね太鼓たいこたたき方は、コンコンチキチコンチキチの囃子はやしで、芝居で「釣狐つりぎつね」などというものの外には出でなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
能の方は稽古のむずかしいもので、尤も狂言の方でも釣狐つりぎつねなどと申すと、三日も前から腰をかゞめている稽古をして居ませんければ、その当日に狂言が出来んという。
梅若七兵衛 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)