釘抜くぎぬ)” の例文
旧字:釘拔
釘抜くぎぬきであって、しかも普通の手となる。突然に指が開くのを感ずる。つかんだ獲物を放つ。それは実に恐怖すべきことである。
「初めてお目にかかります。私は、釘抜くぎぬきの勘次郎と申しますもので、そいつをちぢめて、釘勘くぎかんというのが通り名になっている目明めあかしでございます」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そとから隙見すきみのできないようにしておいて、用意の釘抜くぎぬきで木箱のふたをひらきはじめた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その足さきはまるで釘抜くぎぬきのようにとがり黒い診察鞄しんさつかばんもけむりのように消えたのです。
ひのきとひなげし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
五左衛門の釘抜くぎぬきのような腕はグイと伸びました。
私の仕事ですから、ポケットの中に金槌かなづちたがね釘抜くぎぬきとを入れて置きます。棺車が止まって、人夫どもがあなたの棺を繩でゆわえて、穴におろします。
オイオイ、駄目だ駄目だ、逃げようたって逃がしゃあしねえ。徳島奉行の御配下で、釘抜くぎぬきの眼八といわれている鬼手先おにてさきだ。その釘抜きが噛みついてしまった以上は、めったにここを
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
マリユスはあたかも釘抜くぎぬきにはさまれたように感じた。すなわち、ジャン・ヴァルジャンとコゼットとあれほど長く生活を共にしてきたのは、どうしてだったろうか。
老人のポケットから、金槌かなづちの柄や鋭利なたがねの刃や釘抜くぎぬきの二つの角などがはみ出ていた。