野馬のうま)” の例文
もう大じょうぶです。これからこの野馬のうまにのって、明方までに富士川ふじがわの下までお送りしてあげますから、あれから駿府すんぷへでて、いずこへなり、身を
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と時節が早かつたと見えて、三島の山々からひとなだれの茅萱ちがやたけより高い中から、ごそごそと彼処此処あっちこっち野馬のうまが顔を出して人珍しげにみつめては、何処どこへか隠れてしまふのと、蒼空あおぞらだつたが
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
馬春堂の落ちた銭瓶の穴——また樵夫そまの如き風姿をした武士が罰使として野馬のうまを飛ばしてくることも、決してここばかりの事件ではないと見えます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とたがいにいましめあって、ふたたび道をいそぎだすと、あなたの草むらから、月毛つきげ野馬のうまにのったさげがみの美少女が、ゆらりと気高けだかいすがたをあらわした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まき野馬のうまのように、寝そべったり坐ったり、漫然と立ったりしている、一団の人影が黒々とあった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠い昔、推古朝すいこちょうの世には、高麗こまの移民が野馬のうま追いに疲れて腰をかけたかも知れないこの野中の玉石。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうも、途中雷雨にあって、ズブぬれとなりながら野馬のうまをとばして人穴へかえってきた三人の諜者ちょうじゃは、すぐ呂宋兵衛るそんべえのまえへでて、五湖のあたりにおこった急変を注進ちゅうしんした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)