酌取くみと)” の例文
丑松は其精神を酌取くみとつて、父の用意の深いことを感ずると同時に、又、一旦斯うと思ひ立つたことは飽くまで貫かずには置かないといふ父の気魄たましひの烈しさを感じた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
保安上ほあんじやう容易よういならぬ問題もんだいであるといふので(それにみだりに神社呼じんじやよばはりをこと法律はふりつゆるさぬところでもあるので)奉納ほうのう旗幟はたのぼり繪馬等ゑまとうてつせしめ、いはやから流出りうしゆつする汚水をすい酌取くみとるをきん
だが子供のときから躾けというものによって自分を殺し切り、人の思惑や人の好みを察して酌取くみとることにだけ発達させられて来たわたしの心というものが何でこのポーズを見破らずには置こうぞ。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「実は、君より妻へてたる御書面、また妻より君へ宛てたる手紙、不図ふとしたることより生の目に触れ、一方には君の御境遇をもつまびらかにし、一方には……妻の心情をも酌取くみとりし次第に候……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)