過不及かふきゅう)” の例文
第十八条 礼儀作法は、敬愛の意を表する人間交際上の要具なれば、かりそめにも之をゆるがせにす可らず。ただその過不及かふきゅうなきを要するのみ。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
さう云つて友はちよつとまゆを寄せたが、友の内心には何処どこかさとりめいたくつろいだ場所が出来、一脈の涼風が過不及かふきゅうなしの往来をしてゐるらしくも感じられる。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
もしや自分で察し得られんでもほかの人が平生へいぜい程と加減に注意しているとその過不及かふきゅうも自然と解るもので
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一つ一つの能力の優秀ゆうしゅうさが全然目立たないほど、過不及かふきゅう無く均衡きんこうのとれた豊かさは、子路にとってまさしく初めて見る所のものであった。闊達かったつ自在、いささかの道学者しゅうも無いのに子路はおどろく。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そしてこれに飯を盛るに、をして盛らしむるときは、過不及かふきゅうを免れぬといって、飯を小さいひつに取り分けさせ、櫃から椀に盛ることを、五百の役目にしていた。朝の未醤汁みそしるも必ず二椀に限っていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)