造做ぞうさ)” の例文
己達はかこみを突いて出ようとしたが、二人の剣は功を奏せなかつた。己は造做ぞうさもなく打ち倒されて、猿轡を嵌められ布で目隠しをせられた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
しかし聡明な、敏捷びんしょうな思索家でいらっしゃるあなたには、わたくしの思っている事は、造做ぞうさもなくお分りになりましょう。
田舎 (新字新仮名) / マルセル・プレヴォー(著)
なに。ぬすっとだ。口で言うのは造做ぞうさはないや。だが何を盗むのだ。誰の物を盗むのだ。盗むにはいろいろ道具もいるし、それに折も見計わなくちゃならない。
橋の下 (新字新仮名) / フレデリック・ブウテ(著)
アンチックは造做ぞうさは無いが、ゴチックはなんにしようかと、太田さんは迷って、随分暇を潰してあれを捜して下すった。即ちミュンステルのドオムから取って下すったのである。
訳本ファウストについて (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お部屋を綺麗きれいに致しましたの。しかし造做ぞうさもない事でしたわ。
造做ぞうさもない。しかしその造做もない事がむずかしいのです。
僕は職業の選びようが悪かった。ぼんやりして遣ったり、嘘を衝いてやれば造做ぞうさはないが、正直に、真面目に遣ろうとすると、八方ふさがりになる職業を、僕は不幸にして選んだのだ。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
造做ぞうさはありませんわ。拭巾があるならお出しなさいよ。
造做ぞうさはない。あれが住む洞穴も遠くはない。
それに手を掛けて、小川君は重い外套を着たままで、造做ぞうさもなく石垣の上に乗って、向側を見卸したそうだ。空は青く澄んで、星がきらきらしている。そこら一面に雪が積って氷っている。
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それは造做ぞうさもない事だ。3510
あれは造做ぞうさはないさ。基底面に高さを乗じたものの三分の一だから、若し基底面が圏になっていれば、⅓r2πhが立方積だ。π=3.1416だと云うことを記憶していれば、わけなく出来るのだ。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)