這奴こいつ)” の例文
助十 這奴こいついよ/\呆れた奴だ。朝つぱらから酒を飮んでゐやあがつた癖に、急病人もよく出來た。あんまり人を馬鹿にするな。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「そうでがすよ。」と、七兵衛は首肯うなずいて、「お前様めえさまよく知っていなさるね。這奴こいつ、若旦那を釣出つりだそうと思ったって、うは行かねえ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こうなると、這奴こいつをうっかり問屋場へ引渡すのも考えもので、いわゆる藪蛇のおそれがあります。憎い奴だとは思いながらうすることも出来ない。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ましてお杉はここに居ない。わが目前の敵は重太郎一人いちにんである。たとい這奴こいつ山𤢖やまわろの同類にした所で、一人ひとりと一人との勝負ならば多寡たかの知れたものである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あくまでも不承知だといえば、這奴こいつは白洲へ出て宝叔塔や侍郎橋の一件をべらべらしゃべるに相違ない。それが発覚したら我身の大事となるのは知れている。
自来也の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(猿をみかへる。)なにしろ這奴こいつがよく馴染なじんでゐるのでね。ちつとの間でもわたしの傍を離れないのですよ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
這奴こいつなか/\悪い奴とみえて、それをかつぐ時に粗相の振をしてわざと問屋役人の眼のまえで投げ出しました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
這奴こいつなか/\気の強い奴、おまけ中間どもに撲られて、これもむしゃくしゃ腹であったらしい。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼方あっちへ行けと云うのに……判らないか。おい、這奴こいつ彼方あっち引摺ひきずって行け。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
這奴こいつ、幸いの獲物、此方こっちが三人に鳥が三羽、丁度お誂え向だと喜んで、忍び足で其のそばへ寄ると、鴨は人を見て飛ばず驚かず、しずかに二足ばかり歩いて又立止たちどまる、この畜生めと又追縋ると