逃帰にげかえ)” の例文
旧字:逃歸
で、そう事が解って見ると、私は猶々なおなお怖く恐しく感じて、とてもここに長居する気がないから、其日そのひうち早々そうそうここを引払ひきはらって、再び倫敦ロンドン逃帰にげかえる。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その小作人は夢中で村へ逃帰にげかえったが、その夜のうちに訳の分からぬ高熱をだして、ひと晩中狂ったように
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれども、先祖の歴史をくわしく知らぬ我々が、何百年ののち、不意に山奥で異形いぎょうの者に出逢うと、何か一種の魔者まものであるかのように考えられて、跡をも見ずして逃帰にげかえるという事になる。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)