辛抱がまん)” の例文
それも圧迫を受けるだけなら、忍んで小さくなって辛抱がまん出来ない事もなかろうが、圧迫が進んで侮辱となり侵略となったらドウする。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
すべてい物には、税がかゝるものだと信じてゐる大阪人は、それでも黙つて辛抱がまんして、馬のやうに抜脚ぬきあしして、そのなかを歩き廻つてゐる。
二葉亭もまたその一人で、一時は商業学校に学籍を転じたが、翌十九年一月、とうとう辛抱がまんが仕切れないで怫然ふつぜんたもとを払って退学してしまった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかし何事も辛抱がまんで、女の「不貞腐ふてくされ」をさへ辛抱がまんする勇気のある男が、女の「親切」が辛抱がまん出来ないといふ法は無い筈だ。
爺さんの考へでは、亡くなつて後のこの世では兎も角も、あの世で、媼さんが自分より外に今一人の亭主を持つてゐる事は、とても辛抱がまん出来なかつた。
女嫌ひな元帥は、結婚だと聞くと、額にさつと皺を寄せたが、それでも談話はなしのすむまではじつと辛抱がまんしてゐた。
山独活の二三本でも悦んで辛抱がまんする。なぜといつて、山独活の高い香気は、私の眼の前に深山のもの寂びた幻影を思ひ描かしめるのに十分なものがあるから。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
友達はいづれもおめかしやそろひと来てゐるので、ある日の事辛抱がまんがしきれないでロツクフエラアに注意をした。
「何事も馬を善くする為だ、ちつとやそつと人間が悪くならうが、そんな事位辛抱がまんしなくつちや。」
馬は女を蹴飛ばすのみならず、その上に女を不縹緻ぶきりやうにさへするものだ。蹴飛ばされて、息が絶える位ならまだ辛抱がまんが出来るが、不縹緻にまでされてはとても溜つたものではない。
私は先日中こなひだぢゆうから、こんな事になるだらうと思つてましたが、今日までじつ辛抱がまんして来ました。所がとうと大変な事になりました。私はもう隠してばかりは居られなくなりました。
一等わかにくいものだが、あれを解らないといふと、馬に比べられる心配があるので、大抵の人は辛抱がまんして解つたやうな顔をしたり、面白い面白いといつて騒ぎ廻つたりするものだ。
それを辛抱がまんしかねた仲間の一人が
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)