踏止ふみとど)” の例文
魔神の姿はもとより何ぴとにも見えないが、その青年が右の手を前へ出して踏止ふみとどまろうと身をもがく形は、確かに捕われた者の様子であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私は大略たいりゃくこと仔細しさいを打あけて、老人の助力を乞うた。どうしても今暫く、この島に踏止ふみとどまっていたいと云い張った。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
貧乏神びんぼうがみ執念しゅうね取憑とりつかれたあげくが死神にまで憑かれたと自ら思ったほどに浮世の苦酸くさんめた男であったから、そういう感じが起ると同時にドッコイと踏止ふみとどまることを知っているので
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
青木が逃げ腰になると、悪党の斧村錠一も一人踏止ふみとどまる勇気はなく、彼のあとについて、入口へと駈け出した。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)