赤煉瓦あかれんぐわ)” の例文
赤煉瓦あかれんぐわの王城のあたりでは、若い安南の女学生が、だんだらの靴下をはいて、フットボールをしてゐるのなぞ、ゆき子には珍しい眺めだつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
第一の衛門を入つて鎮守府ちんじゆふの内を通つて、大きな赤煉瓦あかれんぐわの倉庫の前や山のやうに積んである貯炭場の横やをぬけたり、ボート納庫のある海岸へ出たり
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
鉄門はすでに固くとざされたり、赤煉瓦あかれんぐわへいに、高く掲げられたる大巾おほはばの白布に、墨痕ぼくこん鮮明なる「社会主義大演説会」の数文字のみ、燈台の如く仰がれぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
僕に中世紀を思ひ出させるのはいかめしい赤煉瓦あかれんぐわの監獄である。若し看守かんしゆさへゐなければ、馬に乗つたジアン・ダアクの飛び出すのにつても驚かないかも知れない。
都会で (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
赤煉瓦あかれんぐわ遠くつづける高塀たかべい
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「冗談ぢやねえぜ。あてられてたまるものか。」と、嘉吉は空嘯吹そらうそぶいて云ふ。軈て石垣の岸へ着くと小舟は元のやうにつないで置いて、二人は赤煉瓦あかれんぐわの倉庫の方へ急いだ。此の時かゝれのブウが鳴つた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)