赤毛布あかゲット)” の例文
赤毛布あかゲット上花客じょうとくいでなくなった。現代式とか文化的とかいう言葉を理解する新東京人……半田舎者を相手にしていることがわかるであろう。
宝沢のところの射的屋の親父おやじが露店の間にテーブルを据え、赤毛布あかゲットを敷いた小高い壇に四角な箱を載せ、自分はその脇で大声に口上を述べていた。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
平吉の体はお師匠さんのあたまの上から、海苔巻のりまきや、うで玉子の出ている胴の間の赤毛布あかゲットの上へ転げ落ちた。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
赤毛布あかゲットにて作りたる半纏はんてんを着て、赤き頭巾ずきんかぶり、酔えば、町の中をおどりて帰るに巡査もとがめず。いよいよ老衰して後、旧里きゅうりに帰りあわれなるくらしをなせり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼方あっちの人は赤毛布あかゲットを着て風呂敷包を担いで田舎漢いなかもの丸出しですから、奥さんとか奥ん坊とかいって馬鹿にされます。車屋がうるさく勧めた末、『何だ、この奥ん坊め』と言ったのです。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
弁護士の看板を掲げた家のやけに多いのに眼をみはり、毎日うろうろ赤毛布あかゲットの田舎者よろしくの体で歩きまわっていたのも、無理がなかった、とまあ、往時おうじの自分をいたわって置きたい。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ただ変らないのは、つんと口をとがらしながら、とぼけた顔を胴の間の赤毛布あかゲットの上に仰向けて、静に平吉の顔を見上げている、さっきのひょっとこの面ばかりである。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その中に観音様だけは、昔の通り純江戸ッ子と純赤毛布あかゲットだけを相手にして御座るわけになる。