もとで)” の例文
何等の学歴もなく又もとでもなかつた房一にとつては困難をきはめた仕事であり、それだけに心の全部を惹きつけてゐたものだつたが、今その峠に達してみると
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
小さい頼母子たのもしを結んでそれをもとでに始めたのが米と酒を売る店であった。仕事場を改造してだだっぴろい店ができた。米俵こめだわら酒樽さかだるが景気よく並び、皆を豊かな気持にさせた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
そして休日毎に遥々と故郷の父母を見舞ふと、二人は仲違ひの状態で、阿母は米塩のもとでだけには事欠ぬと云つてゐたが阿父は西瓜畑の一隅の、漂流者の住みさうな小屋にもぐつて
熱海線私語 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)