貸家札かしやふだ)” の例文
つい、あの、とほりがかりに貸家札かしやふだましたものですから、誰方どなたもおいでなさらないとおもひますと、なんですか可懷なつかしくつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「おや、貸家札かしやふだが張ってあるよ。四軒揃って空家だそうな。幸福にお暮らしなさりませ! 空家に住んでおられる方へ!」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
三人は入口いりぐちの五六間手前で留つた。右手みぎてに可なり大きな御影の柱が二本立つてゐる。とびらは鉄である。三四郎がこれだと云ふ。成程貸家札かしやふだが付いてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
互に手を引合った二人は自然と広い表通よりもこの横町の方へ歩みを移したが、すると別に相談をきめたわけでもないのに、二人とも、今は熱心にこの土地の貸家札かしやふだに目をつけ始めた。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
細君さいくんは自宅から病院へ往ったり来たりして居た。甚だ心ないわざながら、彼等は細君にわかれを告げねばならなかった。別を告げて、門を出て見ると、門には早や貸家札かしやふだが張られてあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
貸家札かしやふだって置いたから、空家と思ったのも無理はありません」
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)