譫語うはごと)” の例文
想ふに彼等の驚愕おどろき恐怖おそれとはその殺せし人の計らずも今生きてきたれるに会へるが如きものならん。気も不覚そぞろなれば母は譫語うはごとのやうに言出いひいだせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼はエデインバラに留学中、電車に飛び乗らうとしてころげ落ち、人事不省じんじふせいになつてしまつた。が、病院へかつぎこまれる途中も譫語うはごとに英語をしやべつてゐた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
看病にはフエネルラとて、みゝしひたる女を附けられしかば、幸に我譫語うはごとも人に怪まるゝことあらざりしならん。されどフアビアニ公子の屡〻病床に來給ひぬといふは、猶胸苦しき心地ぞする。
なほよく死にいたるまで譫語うはごとを口にせざりき。
呼子と口笛 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夢うつゝで譫語うはごとに言ふ如く
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
わたくし看病に参つてをります者でございますが、何方様どなたさまでゐらつしやいますか存じませんが、この一両日いちりようにち病人は熱の気味で始終昏々うとうといたして、時々譫語うはごとのやうな事を申して、泣いたり
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
嗚呼、是れ皆熱の爲めに發せし譫語うはごとのみ、苦痛の餘なる躁狂さうきやうのみ。我に心の光明を授け給ひし神よ、我運命の柄を握り給ふ神よ。我は御身の我罪を問ひ給ふことの刻薄ならざるべきを知る。