いわれ)” の例文
いわれは何かこれにこそと、七兵衛はその時からあやしんで今も真前まっさきに目を着けたが、まさかにこれが死神で、菊枝を水に導いたものとは思わなかったであろう。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
駈け上がりとは時間ギリギリに楽屋へ入ってすぐそのまま一服もせず、高座へ駈け上がっていくのいわれだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
おじさんはいちど私のことをいのちの恩人だと云ったことがあるが、そんなに感謝されるいわれはなにもない。
おじさんの話 (新字新仮名) / 小山清(著)
権ぺいに吩咐いいつけがましくいうことが、今のお通には、いわれなく思われて、っと反感をあおられてならない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分を皇帝の身代りに処刑するなどという考えはどうも素っ頓狂なばかりでなく、かりにもしそうだとしたら自分を釈放する筈はなく、まして皇帝として待遇するいわれなぞない。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
漫然とダアビイと称するものの、ほんとのいわゆるダアビイデイはエプソムの二日目で、しかもダアビイ競馬というのは、この日の全六回のうち第三回、午後三時に行われるたった一回のいわれにすぎない。