じょう)” の例文
「これはこれは分に過ぎたる有難きごじょうではござりますが、葉之助儀は脳弱く性来いささか白痴にござりますれば……」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
明十四日の上覧能に持参せよとのごじょうがござったゆえ、うろたえてようやく借用の百金を調達いたし、さきほど受け質に参ったのじゃが、しかるに、どうしたことやら——
いまだに浪人致しおるとは不愍ふびんな奴、旧禄通り召抱えてつかわせい——という有難いごじょうじゃ
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この儀ならぬとのごじょうにませば、ご紋の御旗みはたいただきたく、さすればこれを証拠の品とし、関東方へ引き渡し、合戦いたせしと申しちんじまする」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「奥方さまのおたのみで、お祈祷いのりにあがりました……ハイ、三人の姫君さまが、そろいもそろうてご風気ふうき大熱たいねつ……そのご平癒へいゆを神さまにおいのりしてくれとのごじょうをうけてまいりました」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ではもう、てまえが手を下さなくともよろしいとのごじょうでござりまするな」
「ごじょうではござれどさようなこと融川お断わり申し上げます! もはや手前と致しましては加筆の必要認めませぬのみかかえって蛇足と心得まする」
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
将軍家をはじめ扈従こじゅうの諸侯がたが、今から小石川のご用矢場に回って、御前競射をすることになったので、至急に愛用の弓を屋敷からその小石川のほうへ辰に持参せい、というごじょうなのでした。
厚く物をまかなった上、なお今後ご用をつとめるようにとの、ごじょうをさえ内密に賜わったのであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「これじゃ! てまえのこの鹿毛かげにて参れとのごじょうじゃ!」
「お好奇心ものずきの結果と存じまする」「それが第一の考え違いだ。決して好奇心の結果ではない。諏訪家の恥辱をそそぎたいためよ」「これはこれは不思議なごじょう、私胸に落ちませぬ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いや、かねがね伊豆守様が仰せでのう。手にあまる変事出来しゅったいの節は、八丁堀に一人心きいた者がおるゆえ、忘れずに、とごじょうござったゆえ、その一人とは貴殿よりほかにござるまいと、とりあえず早馬さしあげたのじゃ」
「やむを得ませぬ、ごじょうかしこみ、ともかくも参ることに致しましょう」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「はっ。てまえ一人にてぜひにも捜せとのごじょうでござりますれば、少しく日にちはかかりましょうとも、必ずともに潜伏先突きとめてお目にかけまするが、古橋どのはもとよりのこと、辰九郎ことも御前にはご縁故のものにござりますゆえ、できますことなら——」
これはまことに討手にとっては、何より有難いごじょうであった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)