親類みより)” の例文
「あののお前、黒瀬ぬいという婆様を知らねえかい。」「あい、知っておりやす。したがお前様は親類みよりの人かね。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老爺さんが得意になると、今まで冷笑していた親類みよりのものが手伝い志願を申出た。自分たちも損をしただけ取りかえそうという、御直参旗本の当主や子や孫である。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それに私は他人なんて——自分とはまつたくえんのない、同情もない他人なんて欲しくありません。私は、親類みよりが欲しいのです。一緒に、深い同情をし合ふやうな人々を。
「両親も兄弟も、親類みよりみたいなのも、深川の空襲で、きれいさっぱりやられてしまったわ」
虹の橋 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
隧道トンネルの崩れたのは自分の監督が行き届かなかったからで、ほかに親類みよりがないと言うならば、このまま村役場の手に渡すのも可憐そうだからおれが引き取って埋葬してやるというので
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
心安立こゝろやすだてが過ぎてお前さんをった事も有りましたが、誠に済まない事を致しました、私はもう死にますから此の事だけお知らせ申して死度しにたいと思い、ことにお前さんは親類みより縁者たよりは無いけれども
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
親類みよりらしい者もない、全然まるっきりやもめで、実際形影相弔うというその影も、破蒲団やぶれぶとんの中へ消えて、骨と皮ばかりの、その皮も貴女、褥摺とこずれに摺切れているじゃありませんか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みゑ「私は親類みより便りの無い身に成ったのよ」