見透みとおし)” の例文
また、誰が見ないまでも、本堂からは、門をうろ抜けの見透みとおし一筋、お宮様でないのがまだしも、鏡があると、歴然ありありともう映ろう。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
健一は、いきなり開いた窓から飛降りましたが、まだ月の出には早い林は、塗り潰したような闇で、一寸先の見透みとおしもつきません。
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
見透みとおしの裏は小庭こにわもなく、すぐ隣屋となり物置ものおきで、此処ここにも犇々ひしひしと材木が建重たてかさねてあるから、薄暗い中に、鮮麗あざやかなその浅黄の手絡と片頬かたほの白いのとが、拭込ふきこんだ柱に映って、ト見ると露草つゆぐさが咲いたようで
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)