覇力はりょく)” の例文
どこまでも覇力はりょくを用いず血で血を洗うようなことは避け得られる限り避けねばならぬと——あのご老躯に、あの豪毅なご気質をもじっと抑えて
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大軍をまかして、安心できるような老将には、義仲を討つ覇力はりょくが足りない。元気に富む若武者ばかりでは、軍令が行われまい。議論倒れになりやすい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、秀次のいだ三好家は、室町以来の名門であり、父母の家は、月と共に栄え、叔父の秀吉は、日と共に、天下に赫々かっかくたる覇力はりょくと名声を揚げてゆく。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわばいつのまにか、覇力はりょくの日本は、二つに割れ、その二つの対峙たいじが、いまや表面化してきたものといえる。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
末梢まっしょうにかまっていては、政治はできぬ。要は、根本こんぽんの君とおはなし合いをすすめるにある。そちのような覇力はりょく一方をもって臨んでは、せっかくな和議も無意義。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、それも覇力はりょくの名ですから時のうつろい次第です。ひとたび足利氏が衰えれば、逆賊、佞将ねいしょう、涙なき権謀の人物と、あらゆる悪名や人のつばを浴びるときがないとも限りませぬ。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一山は、どうなることかと、戦慄せんりつした。高野は、信長以来睨まれていた覇力はりょくの法城の一つだったからだ。——しかし、秀吉は信長のように、みだりに、寺院撲滅じいんぼくめつを急務としている者ではない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)