けごろも)” の例文
おお、私の太陽。私はだらしのない愛情のように太陽がしゃくに触った。けごろものようなものは、反対に、緊迫衣ストレート・ジャケットのように私を圧迫した。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
そのかしらには雉尾を揷し、羊のけごろもを着け、犬に跨りて昭君のしりへに従ふ、昭君はしばしば振り回りて後髪ひかるる思ひあれば、羊裘児は情容赦もあらばこそ、鞭あげて逐ひたてゆく。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
肥えた馬、軽いけごろも、ひどく立派な旅装をしていたが、嚢中のうちゅうには宝玉がみちていた。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それからその寝姿を半蔽なかばおおっている、着物らしいものが見えましたが、これは芥火にそむいているので、噂に聞く天狗の翼だか、それとも天竺てんじくにあると云う火鼠ひねずみけごろもだかわかりません。——
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あなたに引きかえて、あなたの兄さんは、山羊のけごろもを被った狼です。
イワンとイワンの兄 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
そこにはあの古いけごろもまでが古い鉤に懸けてある。
焦生は腹心の客と相談して、権力のある中央の大官に賄賂を入れてその罪をのがれようとした。そこで、莫大な金を出して、王鼎ぎょくてい冬貂とうてんを買い入れたが、買った晩に鼎が破れ、けごろもが焼けてしまった。
虎媛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)