衣冠束帯いかんそくたい)” の例文
旧字:衣冠束帶
ところがこの似絵のお人は、甲冑かっちゅうもつけず、床几しょうぎにかかって采配さいはいを持たず、衣冠束帯いかんそくたいというのでもありません。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
片手をひざに垂れた時、や其の襖際に気勢けはいした資治やすはる卿の跫音あしおとの遠ざかるのが、しずかに聞えて、もとの脇廊下わきろうか其方そなたに、おごそか衣冠束帯いかんそくたいの姿が——其の頃の御館みたちさましのばれる——ふすま羽目はめから
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小翠は衣冠束帯いかんそくたいして宰相に扮装したうえに、白い糸でたくさんなつくりひげまでこしらえ、二人の婢に青い着物を着せて従者に扮装さして、うまやの馬を引きだして家を出、作り声をしていった。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
(ああ、明けても暮れても、木像と話しているというものは、退屈だのう。とはいえ、木像自身も、身をもて余すじゃろう。衣冠束帯いかんそくたい、脱ごうにも脱げんし——)
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)