行先ゆきさき)” の例文
中には娘の死んでからの行先ゆきさきを聞いたものがある。巫女は死んでからは、の人も平等に同じい幸福を受けるものだ。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
行先ゆきさきの認めのい松公を慕って居ても末始終お前の身の上が覚束無おぼつかねえよ、縁有って一度でも二度でも苦労をした間柄だから、少しの金で松公の手が切れる事なら
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お島はその日も、外へ出ていった鶴さんの行先ゆきさきを、てっきり植源のおゆうのとこと目星をつけて、やって来たのであった。そして気味を悪がって姉の止めるのもかずに、出ていった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私は若かったので、君の行衛ゆくえを探すすべを知らなんだ。多くの債権者を持つ君の父親は、何人なんぴとにもその行先ゆきさきを知らせないで、姿をくらましてしまった。私はいつ君に逢えることか分らなんだ。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
行先ゆきさきがはっきりしていればね」
行先ゆきさきくらい。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
門野がうちをあけると申しましても、極くわずかの間で、それが大抵たいてい行先ゆきさきが知れているのですし、日記帳だとか手紙類、写真までも、こっそり調べて見ましても、あの人の心持を確め得る様な跡は
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)