蚤取粉のみとりこ)” の例文
一つ十銭の歯ブラッシや雲脂取ふけとり香水や時間表や蚤取粉のみとりこなどを買い集めてそのトランクの中に叩きこんで出かける手軽さとは、正に天地霄壌てんちしょうじょうの差があった。
八の内にもあるやうな脚炉あんくわから引き出した、四角な黒い火入ひいれから蚊遣かやりけむりが盛んに立つてゐる。小男の客は、をりをりその側にあるブリキのくわんから散蓮華ちりれんげ蚤取粉のみとりこすくひ出して、蚊遣の補充をする。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「腰かけたまわりには、さっき上げといた蚤取粉のみとりこくんですよ。そうしないと虫に食われますよ」見送りの事務員のいたわった声が桟橋から響いた。娘はポケットを押えてみて、窓からお叩頭じぎをした。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
やつと旅屋やどやを見つけて、泊り込むと、直ぐと南京虫がちくちくしに来るので、とても寝つかれない。留学費のなかから買込むだ大缶おほくわん蚤取粉のみとりこを、惜気をしげもなくばらいてみたところで一向利き目が無い。
蚤取粉のみとりこなどからだに振りかけてやったものだ。