藪道やぶみち)” の例文
「そうそう、西の藪道やぶみちを二、三里行くとな、ちょっとした酒屋や肉屋の用は足りる。ただ、馬糧廠ばりょうしょうは、まぐさ盗ッ人がよく狙うところだから、それだけは用心しなよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生憎あいにく女の来ようがおそかった。怒った彼れには我慢が出来きらなかった。女の小屋にあばれこむ勢で立上ると彼れは白昼大道を行くような足どりで、藪道やぶみちをぐんぐん歩いて行った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「そうだ、西の藪道やぶみちを二、三里行けば酒屋もあるとかいっていたな。どれ、一と走り行ってくるか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二つの勢いは、その藪道やぶみちでぶつかった。味方は味方の雄々しい姿を見ただけだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これより先は、泥田どろたあぜや狭き藪道やぶみち。一筋押しの御先駆は、可惜あたら、無駄にお生命いのちをすてにはやり遊ばすようなもの。——また、織田家中には、殿のほか、人もなきに似たり。おとどまり候え」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裏庭から、藪道やぶみちへと、突き出した。鋭いほど深い情けの声だった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)