藍瓶あいがめ)” の例文
それはちょうど、紺屋こんや藍瓶あいがめの中へ落ちた者が、あわてふためいて瓶からい上るような形であります。かおも着物も真黒でありました。
けれど家の中にはいると、様子がだいぶ違う、藍瓶あいがめが幾つとなく入り口の向こうにあって、そこに染工職人がせっせと糸を染めている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
正香はまた、四つずつ一組としてある藍瓶あいがめを縫助にさして見せた。わざと暗くしてあるような仕事場の格子を通して、かすかな光線がそこにさし入っている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「さてまたさぞにがる事だろう、ほうしょは折目れが激しいなあ。ああ、おやおや、五つ紋の泡が浮いて、黒の流れにあいげて出た処は、まるで、藍瓶あいがめの雪解だぜ。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)