薩南さつなん)” の例文
そして薩南さつなんの乱には自分の身代りになって、敵の狙撃弾そげきだんのため胸を射抜かれた。……彼の右胸にある弾痕が、自分の命を助けて呉れた記念である。
春いくたび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と唱うる薩南さつなんの健児たちは、神とも信頼している西郷隆盛さいごうたかもりを擁し、桐野きりの・別府・篠原しのはらなどの郷党の諸将に引率されて、総勢三千四百人を、二大砲隊十六小隊に組織し
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明治十年の西南戦争は、明治政府の功臣たちの間の争いであり、兵の組織も新式になってからであるから、薩南さつなんの地であったとはいえ、朝野ちょうやを挙げて関心をもっていた。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
また西郷南洲さいごうなんしゅう廟堂びょうどうより薩南さつなんに引退した時の決心、また多数にようせられ新政厚徳こうとくはたぐるに至った心中は、おそらくはその周囲におった人にも分からなかったであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
やがて来るものは何か。薩南さつなんの青年や長土ちょうどの若者は、何を目ざして来つつあるか。おのおのの眼にはうつらぬか。剣道精神と申すものは、かかる有事のときにこそ、発揚すべきもの。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)