蔭弁慶かげべんけい)” の例文
「多々良さんは蔭弁慶かげべんけいね。うちへなんぞ来ちゃ大変威張っても鈴木さんなどの前へ出ると小さくなってるんでしょう」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吉弥はこれがしゃくにさわったとかで、自分のうちのお客に対し、立ち聴きするなどは失礼ではないかとおこり返したそうだが、そのいじめ方が不断のように蔭弁慶かげべんけい的なお君と違っていたので
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
さてその相手の人に面会したとき自分の良心にじて率直にべることの叶わぬ事をかいて居ながら、遠方から知らぬ風をしてあたかも逃げて廻わるようなものは、之を名づけて蔭弁慶かげべんけいの筆と云う
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また一人が「御気の毒だが、いくら威張ったって蔭弁慶かげべんけいだ」と大きな声をする。主人は椽側えんがわへ出て負けないような声で「やかましい、何だわざわざそんなへいの下へ来て」と怒鳴どなる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)