華胥かしょ)” の例文
あるいは夜間睡魔をふせぐためか、または心地よく華胥かしょの国に遊ぶために、すなわちこれをわが国の言葉でいえば、「おとぎ」のために語られるのであるから
『グリム童話集』序 (新字新仮名) / 金田鬼一(著)
夏になると私は好んで華胥かしょの国に散歩する。南華真経を枕として伯昏夢人や、列禦寇の輩と相往来して四次元の世界に避暑する。汽車賃も電車賃もなんにも要らない。
惰眠洞妄語 (新字新仮名) / 辻潤(著)
いい心持に、すっと足をのばす、せなかが浮いて、他愛たわいなくこう、その華胥かしょの国とか云う、そこへだ——引入れられそうになると、何の樹か知らないが、萌黄色もえぎいろの葉の茂ったのが、上へかかって
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふすまを打ちかずきながら書籍、雑誌など読みいたりしに、ようやく睡気ねむけづきて、やや華胥かしょに遊ばんとする折しも、枕辺の方に物音して、人の気配するままに驚きて目を開き見れば、こはいかに
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
軒の風鈴に緑を吹き来る風の音やかましからず、そのチリチリに誘われてツイ華胥かしょの国に遊び去る、周荘が胡蝶の夢も殊の外に安らかで、醒めぎわの現なしにも愛らしき音は何の妨げともならぬぞ嬉しい。
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)