草舎くさや)” の例文
真暗い五月闇さつきやみ草舎くさやの紅い火を見るも好い。雨も好い。春陰しゅんいんも好い。秋晴も好い。る様な星の夜も好い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
“並木町——いにしへ、松、桜、榎等の列樹、路をはさんでありしを以て名くと云ふ。慶安頃まで、樹間に草舎くさやありて、草履草鞋わらぢなどひさぎしのみなりしが、後漸く人家稠密に及び、遂に今の街衢をなす。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
一坪程の小さな草舎くさやがある。屋後うしろには熊の髑髏あたまの白くなったのや、まだ比較的なましいのを突きしたさお、熊送りに用うるアイヌの幣束イナホなどが十数本、立ったり倒れたりして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
此処は十勝で、つい川向うが釧路、創業当時の草舎も其の川向かわむかいにあって、今四男又一君が住んで居る。駅逓の前は直ぐ北見街道、其向うは草叢くさむらひらいて牛馬舎一棟、人の住むひく草舎くさやが一棟。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)