若殿原わかとのばら)” の例文
見る人懵然ぼうぜんとして醉へるが如く、布衣ほいに立烏帽子せる若殿原わかとのばらは、あはれ何處いづこ女子むすめぞ、花薫はなかほり月霞む宵の手枕たまくらに、君が夢路ゆめぢに入らん人こそ世にも果報なる人なれなど
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あの女を連れて参れとの御意なので、御前におりました若殿原わかとのばらが早速引き立てゝ参りました。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
幸か不幸か、道庵先生がソクラテスほどの哲人でなかった代りに、相手がギリシャの若殿原わかとのばらほどの弁論家でなかったから、霊魂は調和か、実在か、の微妙なところまでは進まず
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
薄暮の野球場に劇的光景が展開された。感激に富む数千の若殿原わかとのばらはそのまゝ去りやらぬ。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
若殿原わかとのばらせんをかけられまいという心遣いや金づかいに糸目を附けず。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
春浅し若殿原わかとのばらの馬はや
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この品位ある若殿原わかとのばらが、寺男の米友風情に、こうまで罵られて言句がつげないのか、また、日頃、親切で正直な男が、まるで狂犬やまいぬみたように、どうして一見の人にガミガミ噛みつくのだか
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)