若死わかじに)” の例文
彼がたとえ若死わかじにをすればとてこの遠大なる理想を有するにおいては、これをもってただちに長命ちょうめいと呼ぶ、なんの不可ふかれあらんやである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
二十年位で若死わかじにを致したものと思って見ましたの。(画家頭を振る。)幸福の真最中まっさいちゅうに死んだのでございますわ。美しい死でございましょう。
お辻は十九で、あえて不思議はなく、わずらつて若死わかじにをした、其の黒髪を切つたのを、私は見て悚然ぞっとしたけれども、其は仏教を信ずる国の習慣であるさうな。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、そんな苦悩や恐怖の中に日を送ったことがきっと父の不幸な若死わかじにをよほど早めたのに違いないと思う。
母親は若死わかじにした、やがて父親もなくなった。その遺言に因れば、梓の実の姉が一人ある。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)