若干いくらか)” の例文
「ええええ帰って来ましたとも。この通り帰って来ましたよ」私は彼女の情熱に若干いくらか圧倒されながら、情愛を籠めてう云った。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
米友が持って来た枕許まくらもとの紙入を取り出して、ちょっとおまじないの真似まねをしてから、若干いくらかを紙に包んで、くだんの男の前へ突きつけて、道庵が言いました
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
塚山はおたみをかわいがっていたお妾が病死した後、今では引取る人のない事を告げ、若干いくらかの金をも与えた上、この後も身の上の事については相談にあずかってやろうといって別れた。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
釧路は裁縫料したてちんの高い所であれば、毎月若干いくらか宛の貯蓄もして居たのを、此家ここの主婦が人手が足らぬといふので、たつての頼みを拒み難く、手伝に来てからモウ彼是半年になると云つた様な話で
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もう来るころと待っていて若干いくらか祝儀を出すとまたワッショウワッショウと温和おとなしく引き上げて行くがいつの祭りの時だったかお隣の大竹さんでは心付けが少ないと言うので神輿の先棒で板塀を
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
というから、源次郎は懐中より金子きんす若干いくらかを取出し
この惨酷な屠殺戦では、かなり味方も傷ついたので重い負傷者の若干いくらかを土人の部落に預けて置いて、負傷きずつかない壮健の者ばかりがここまで来たということであった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
兵馬から若干いくらか小遣こづかいにありついた上に、せき立つ兵馬を抑えて、わざとゆっくり構え込み
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兵馬は、子供に若干いくらかの手間賃を与えて、またも悠々閑々ゆうゆうかんかんとして、松本平へ下りました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)