苔生こけむ)” の例文
その塔の一つは、苔生こけむしたかわら屋根の頂に、あたかも額に縁無し帽子をかぶったかのように、こうのとり空巣あきすをつけていた。村の入り口に遠い十字路で、二人は泉の前を通りかかった。
冷徹れいてつな峡間は、湯滝の下に苔生こけむした天然林を抜け出して、戦場ヶ原をいく曲がり、龍頭りゅうずの滝を落ちて中禅寺湖へ注いでいるが、ここは渓流魚釣りの練習場として、まことに好適の流れである。
雪代山女魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
紫色のもやに浸ってる大木、灰色の像や柱頭、幾世紀もの光を吸収した王政時代の塔碑の苔生こけむした石、それらの上にしている光線の諧調かいちょうを——細やかな日光と乳白色の水蒸気とでできてる
クリストフが家の屋根裏の室から眺めると、壁の外に垂れてる重々しい木の枝や、苔生こけむしたかわら屋根の真赤な高い頂などが見えた。ほとんど人通りもない小さな坂道が、庭の右に沿って通じていた。