臺詞せりふ)” の例文
新字:台詞
朝早く清月に行つてみのるが一人で臺詞せりふをやつてる時などに、濡れた外套を着た酒井が頸元えりもとの寒そうな風をして入つて來る事もあつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
疲れ? へツ、そんな氣取つた臺詞せりふは、あつしの書き拔きにはありませんよ、去年の流行感冒はやりかぜにやられた時、葛根湯かつこんたうを一升五合ばかり飮んで、布團を
「……お光はおらが世話してるちうことは、知らんもんあれへん。言はゞ女房も同じこと。……」と言つた旦那の今の言葉によく似た臺詞せりふが、何やらの芝居にあつたやうにお光は考へ込んだ末
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
臺詞せりふはかうだ——八五郎さんとは夫婦約束をした覺えはないから、これから逢つても口もきかないやうに——とな
脂肪質しばうしつで眼が細くて、一應は美しいと言はれる方でせうが、身のこなしが芝居染みて、何時でも舞臺に立つてゐるやうに、大袈裟おほげさな表情と、ネバネバした臺詞せりふを持つた
「何を言やがる、『春ともなれば』も氣障きざだが、『人間の雌』は聽き捨てにならねえ臺詞せりふだ」
唐棧たうざんを狹く着て、水髮の刷毛はけ先を左に曲げた、人並の風俗はして居りますが、長い鼻、團栗眼どんぐりまなこ、間伸びのした臺詞せりふ、何となく犢鼻褌ふんどしが嫌ひといつた人柄に見えるから不思議です。
「馬鹿だなア、松が取れたばかりぢやないか。そんなのは年のくれに出て來る臺詞せりふだよ」
お靜はもう一度同じ臺詞せりふを繰り返して、立ち去りもならず、そのまゝ居竦ゐすくむのです。
何んとかいふ歌舞伎役者の臺詞せりふ廻しを眞似して居るのかもわかりません。
多分私の頭位は蹴飛ばしたことでせう、ハツとして飛起きると——騷ぐな、金を出せ——とたつたこれだけでございます。言葉は少し作り聲で、丁度芝居の惡方の臺詞せりふ廻しのやうでございました
「親分、臺詞せりふはそれつきりかえ、しやくにさはるぢやないか」
「何が氣に入らないか——は變な臺詞せりふだね」