至嘱ししょく)” の例文
この着想前古に無きものなれば、その画面絶後の輪郭を要すること是非無かるべきなり。読者、一染いっせんの好憎に執し給うこと勿れ。至嘱ししょく。著者謹言
「すなわち、あなた様という者がおる——ということに至嘱ししょくしていたか、あなた様は、お考えになったことがあるか」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らを仇と狙いて、御身の一生を誤ることなかれ。至嘱ししょく至嘱。余の命数尽きたりといえども、静かに天命を待たずして自殺するは、御身に対する我が微衷なり。
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして、かく言わんとする所以のものは、独り、良心ある作家に、至嘱ししょくするからでした。
街を行くまゝに感ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
而して本校の学生諸君にして、学に理学に従わんと欲するものは、宜しく益〻ますますその志想を堅くし、今日の風潮以外に立ち、異日の好菓を収むべし。これ余が諸君に至嘱ししょくする所なり(大喝采)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
たいして才能もないこの身に対して、劉皇叔りゅうこうしゅくには、三の礼をつくし、かつ、過分な至嘱ししょくをもって、自分を聘せられた。性来の懦夫だふも起たざるを得ぬではないか。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは彼が、親の散所ノ太夫義辰にも増して、多年、至嘱ししょくしているものだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)