臙脂色えんじいろ)” の例文
東京の方を見ると、臙脂色えんじいろそらに煙が幾条いくすじも真直に上って居る。一番南のが、一昨日火薬が爆発ばくはつして二十余名を殺傷さっしょうした目黒の火薬庫の煙だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
濃紅色の花を群生させるが、少しはなれた所から見ると臙脂色えんじいろの団塊の周囲に紫色の雰囲気のようなものが揺曳しかげろうているように見える。
雑記帳より(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
病人の着せられている臙脂色えんじいろに白い粗い市松模様を置いた、クレプ・ド・シンの嵩高かさだか羽根布団はねぶとんが思いきり派手なのと、露台への出口が一間の引き違いの硝子戸になっていて
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いつか見たショーウィンドウの高い方のショールや、あの子の好きな臙脂色えんじいろ半襟はんえりや、ヘヤピンや、それから帯だって、着物だって、倹約をすれば一通りは買い揃えることが出来るのだ。
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
臙脂色えんじいろは誰にかたらむ血のゆらぎ春のおもひのさかりのいのち
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
立慶河岸りっけいがしの水に影をうつしていっせいに臙脂色えんじいろの灯が入る。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)